庄川源流・六厩の産廃処分場計画に思うこと

岐阜県高山市荘川町六厩(むまや)で、産業廃棄物の最終処分場を建設する計画が進んでいます。この場所は、富山県を流れる庄川の源流にあたります。庄川のアユが好きで、五箇山や白川郷、庄川峡といった流域の風景も好きな一人として、気になっているニュースなので、まずわかっている事実を整理し、そのうえで個人的に感じていることを書いておきたいと思います。

わかっている事実:計画の概要

高山市の公式サイトおよび岐阜県、地元紙(岐阜新聞など)の報道によると、計画の概要は次の通りです。

  • 事業者:株式会社アルト(富山県内に拠点を置く民間企業)
  • 事業名:六厩クリーンセンター最終処分場整備事業(仮称)
  • 計画地:高山市荘川町六厩字シシ山813番地1外2筆。標高約1,000mで、最低気温が氷点下20度を下回ることもある豪雪・寒冷地
  • 処分場の種類:管理型最終処分場
  • 規模:面積約10万6,256㎡、容量約243万4,073㎥、埋立期間26年間
  • 対象となる廃棄物:産業廃棄物18品目(燃え殻、汚泥、廃プラスチック類、金属くずなど)と特別管理産業廃棄物(廃石綿等)。このなかに、石綿含有産業廃棄物、水銀使用製品産業廃棄物、水銀含有ばいじん等が含まれる
  • 経緯:2018年11月に事業者から岐阜県へ計画が提出され、環境影響評価の手続き(配慮書→方法書→準備書→評価書)が進行中。2024年11月19日付で方法書に対する知事意見が送付されている
  • 立地の水系:計画地直下を流れる六厩川は庄川の源流であり、富山湾に注ぐ水系にあたる

反対の動き(客観的な事実として)

流域の農業団体や漁協など27団体でつくる「庄川流域六厩産廃処分場計画対策協議会」が2023年11月に発足し、2026年7月13日には約10万4千筆の反対署名を岐阜県庁に提出したと報じられています。

高山市自身も、計画に正式に反対を表明しています。市が県に伝えている理由は、積雪寒冷地であるという気候条件、断層からの距離という地盤の問題、住宅地への近接という生活環境の問題、そして下流域の水利用への影響の4点で、「当地は適地ではない」という立場です。市は今後、弁護士や学識経験者の知見も借りながら独自に調査・検証を行い、法的・科学的根拠に基づいた意見を県に提出していく方針だと発表しています。南砺市や白川村の首長からも、懸念や反対の声が上がっていると報じられています。

富山県側で指摘されている懸念点

富山県側からは、意見書というかたちで次のような具体的な指摘がされています。

  • 庄川は南砺市、砺波市、高岡市、射水市の合わせて約35万人の水道水源であり、小矢部市でも庄川の伏流水(地下水)が飲用されている
  • 標準的な浄水処理では、重金属などは十分に除去できないという指摘がある
  • 庄川はイワナ、アユ、サケなどの内水面漁業の場であり、高岡市の養鯉業や砺波地方の酒造業もこの水に依存している。汚染や風評被害による経済的損失が懸念されている
  • 計画地には牧ヶ洞断層が近接しているほか、庄川断層帯や跡津川断層帯といった他の活断層については十分な検討がなされていない、という指摘もある

なお、管理型最終処分場は、法令上、廃棄物の下に二重の遮水シートや不透水性の土壌層を設け、浸出水を処理してから放流するといった構造基準が定められています。ただし、これは管理型処分場に一般的に求められる制度上の枠組みであり、六厩の計画で実際にどのような設備・工法が採用されるかは、生活環境影響調査や審査の中で今後明らかになっていく部分だと理解しています。

イタイイタイ病との関係について、正確に書いておきたい

私自身、この計画を知ったとき、真っ先に頭に浮かんだのがイタイイタイ病でした。ただ、事実として正確に書いておくと、イタイイタイ病の原因物質はカドミウムで、発生源は神岡鉱山(現在の岐阜県飛騨市)、汚染されたのは神通川流域です。今回、六厩の計画地が位置するのは庄川水系であり、川も原因として問題視されている物質(今回は水銀含有物など)も、イタイイタイ病とは直接同じではありません。

とはいえ、「岐阜県飛騨地域の上流で起きたことが、富山県側の下流に影響する」という地理的な構図そのものは共通しています。同じ地域が、かつて重金属による公害で苦しんだ記憶を持っている以上、住民が慎重にならざるを得ないのは自然なことだと思います。事実を混同せず、それでもなお心配になる、というのが正直なところです。

個人的な思い:不確実だからこそ、心配してしまう

ここからは私個人の感想です。管理型処分場に一定の安全設計基準があることは、事実として理解しています。それでも、26年間という長い埋立期間、そしてその後も続く維持管理の期間を考えると、「絶対に漏れない」と言い切れるものではないはずです。特に水銀は、ごく微量でも生物に蓄積していく性質が知られている物質です。安全か危険かが科学的に完全に決着しているわけではない以上、その「わからなさ」自体が心配の種になってしまいます。

私は庄川のアユが大好きです。そのアユに、たとえわずかでも影響が及ぶ可能性があると考えると、素直に受け入れることができません。また、計画地のすぐそばには、世界遺産である五箇山・白川郷の合掌造り集落や、砺波市の庄川峡遊覧船といった、流域の大切な観光資源もあります。もし何かあったときの風評被害を考えても、心配は尽きません。

おわりに

私の心配が杞憂であれば、それに越したことはありません。ただ、杞憂かどうかわからない段階では計画中止してほしいです。

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